2015年09月26日

『この漫画、結構おススメです』!

皆様ご機嫌麗しゅう。FORTRESS WEB SHOPのタナ・セガールでございます。

近頃とみにエントロピーが増大しつつある我が家でございますが、少し前にどハマりしていた漫画が掃除のおりに本の山の中から出て参りましたので、この際ご紹介してみたいと思いまする!↓

『この漫画、結構おススメです』!
『荒野に獣慟哭す』(こうやにけものどうこくす)
いや~、どマイナーな作品で恐縮ですねえ。当ブログの読者様の内、いったい何人がこの作品知ってるんだろうって話ですねえ?
この作品、日本におけるSF/伝奇小説の大家ともいえる夢枕獏先生の同名小説を、『ニルヴァーナ・パニック』や『斬魔剣伝』、『モンスターコレクション・魔獣使いの少女』といった作品で知られる(知らんか?)伊藤勢先生がコミカライズしたもので、今は無きマガジンZ誌で連載されておりました。
同誌の休刊に伴い『俺たちの戦いはまだまだこれからだぜ!』みたいな形で未完のまま一旦は幕を閉じたものの、徳間書店のWEB本ともというネットサイトで数年前から連載が再開され、オリジナルの連載開始から10年以上の時を経て奇跡的に完結をむかえたという異色の作品であります!

ホント伊藤先生の漫画って、作品そのものは面白いのに、掲載紙の休刊で未完のまま終わってしまった作品が結構多くて、なんとも不遇なんですよねえ。



『この漫画、結構おススメです』!
▲作風に関して大雑把に例えれば、山田風太郎風能力バトルものというか、世界観が異様にリアルな仮面ライダーという感じでしょうか?うん、訳のわからん例えでしたね。

人間の脳内で増殖し、宿主の肉体的ポテンシャルを極限まで引き出す特殊なRNAウイルスDV-2(独覚ウイルス2型)の被験者となり、軍用生体兵器『独覚兵』(どっかくへい)に改造された主人公が、副作用で記憶を失ったまま企業間の暗闘に巻き込まれ、死闘を繰り広げるというようなストーリーであります。
上の画像が主人公の御門周平(みかどしゅうへい)。原作だと30代前半くらいのゴリマッチョ系キャラなんですが、漫画版では20代の初めで風貌もご覧の通り中性的な風貌の細マッチョに変更されております。
自らの体験に起因する記憶のみが(不自然に)欠落しているものの、元医学生という事もあって天才的な頭脳の持ち主であり、加えてゴリラなみの腕力とヒョウ並みのスピードをも兼ね備えた完璧超人系キャラ。
まあ性格的にはややドライすぎて、いささか難ありな青年なんですが。



『この漫画、結構おススメです』!
独覚兵というのが、仮面ライダーでいうところの改造人間に当たる存在なのですが、御門が第2世代の改良型ウイルスであるDV-2の被験者であるのに対して、第1世代であるDV-1の被験者となったのが、日本有数の大財閥であり防衛省/自衛隊とも深いつながりを持つ『土方グループ』の私兵部隊『ゾンビスト』から選抜された11名の兵士達。つまり独覚兵は御門も合わせ12名いる訳ですね。
独覚兵たちにはそれぞれ薬師如来の眷属である十二神将にちなんだコードネームが与えられており、御門も宮比羅(くびら)というコードネームを持っています。ちなみに上の画像のウサギみたいなオッサンは安底羅(あんてら)。

独覚兵が所属するゾンビストは、元をたどれば極秘裏に海外に派遣されて戦闘任務に就く陸上自衛隊の非公然部隊『特殊任務課』。特殊作戦における機密保持の為に隊員達は訓練中の事故で殉職という形で戸籍が抹消されており、法的には『死人』扱いであることから、皮肉を込めてゾンビスト(死者部隊)と呼ばれている訳ですね。
その後どのような手段を使ったのか、土方グループが部隊ごと買い取って企業の私兵とした訳ですが、物語の序盤あたりで『戦闘集団としての自分たちを満足に使いこなせない』グループ上層部に見切りをつけ、ユカタン半島における石油開発利権をめぐって対立している米国の巨大企業連合体『ケルビム』に鞍替えする事に。

このゾンビスト、立場上は主人公の敵という事になるのですが、個々のメンバーを見ていくと実直で人の良い陸上自衛官OBという感じに描写されており、妙~に憎めない連中だったり致します。



『この漫画、結構おススメです』!
▲第1世代の独覚兵であるD1型11名は、超人的な身体能力/戦闘能力を得た代償として形態変化(肉体が特定の動物に似た姿に変形)と異物嗜好(食人欲求)という二つの副作用が出ており、さながら人食いの獣人といった風情!しかし見た目に反して思考能力や知性は全く損なわれておらず、意外と理性的に作戦を遂行します。(※敵は容赦なく食い殺しちゃうけど、作戦上の攻撃対象以外には危害を加えない。)
原作小説ではなんか主人公に一切関わらないまま、知らん間に死んでました的なヒドイ扱いだったキャラも多いのですが、漫画版では各キャラクターに固有の特殊能力や見せ場が付け加えられていて、バトルシーンも凄くエエ感じに!(伊藤先生の漫画の常で、スプラッタな人体破壊描写がとんでもなく多いですが。)特にしみじみとおっさん臭い卯の安底羅(あんてら)と、無口だけど実は男前な辰の額爾羅(あにら)の2人がいい味出してます!
それにしても伊藤先生の絵って、骨格の構造や筋肉の付き方が解剖学的にしっかりと描写されてて、どんな動きをしていても破綻がない所がカッコいいよね!

ちょいとミリネタ的なところを挙げると、ゾンビスト兵士たちの装備は概ね現用の陸上自衛隊系で、小火器は恐らく横流し品と思われる89式小銃の固定/折り曲げ銃床型、MINIMI分隊支援火器、9mm拳銃、9mm機関拳銃、車輛は高機動車や軽装甲機動車、ヘリコプターはUH-1JやUH-60J、CH-47Jなんかを運用しております。(※ヘリは陸自からのレンタル品にエンブレムシールを貼ってるだけという説有り。)
常人より遥かに優れた筋力を持つ独覚兵たちは、ハンドキャノンことデザートイーグル50AEやベルト給弾式の分隊支援火器に改造された89式カスタム、対空機関砲を改造した物と思しき特製対物ライフル、メキシコ編の一部ではブラックマーケットで調達してきたらしいMG34多用途機関銃などといった強力な火器を使用。



『この漫画、結構おススメです』!
▲でもってそのゾンビストを率いているのが、陸自特殊任務課元課長『薬師丸法山』(やくしまるほうざん)という人物。元々は自衛官では無く武術家で、かつて薩摩藩で御留流(おとめりゅう/藩外不出)とされた『薬師丸流武術』(徒手格闘と各種武具の扱いを統合した合戦武術)の継承者。
『戦いにおける勝利とは、すなわち敵の死である』という思想を持ち、格闘技の世界大会で何人もの強豪選手を殺害、あるいは再起不能に追いやってきたその異能ともいえる強さを買われ、自衛隊に武道特別教官として招聘されたという経歴の持ち主であります。

常人でありながらその類稀なる戦いのセンスと磨き上げられた戦闘技術、そして豊富な実戦経験により、独覚兵をもしのぐ人外的な強さを誇るトリックスター系キャラであり、伊藤先生の漫画によく出てくる『黒メガネの怪しいおぢさん』の系譜に連なる人物造形です。
性格はひょうきんな外道といった感じで、しょ~もないオヤジギャグをかまして部下に総スカンを食らってみたり、流れ星に手を合わせつつ『世界中から飯のタネ(戦争)が無くなりませんように!』とか願をかけちゃうようなお茶目なおっさん。独覚兵のコードネームの名付け親でもあり、元ネタに薬師十二神将を持ってきたのも、自分の名字に引っかけた洒落ですね。
なお、お気に入りの武器は全長180cm余りもの長大な野太刀(斬馬刀)と9mm機関拳銃。

それにしても福利厚生に力を入れている非合法組織ってのも珍しいですね。忘年会で隠し芸大会やってるみたいな台詞も出てくるし、なんか異様にアットホームな集団なのかも。



『この漫画、結構おススメです』!
▲商品価値の高い『人間の姿をとどめた独覚兵』となった御門は、各勢力にその身柄を手に入れるべく追われる事になりますが、最終的には自分を一人の人間御門周平として必要としてくれた運命の女性『明石摩耶』(あかしまや)の属するメキシコの先住民族ラカンドン族の反政府組織『メッツァボック』とともに、油田開発の為に彼らの聖地を奪おうとする企業連合体と戦う事に。
その中で独覚ウイルスの秘密やユカタン半島における半人半獣の神々(アステカ文明のケツァルコアトルやマヤ文明のククルカン、ラカンドン創生神話のメッツァボック)の伝承の真実が解き明かされていくという、伝奇ものとしての色彩が強い展開となっていきます。

原作は『荒野に獣慟哭す』というタイトルの通り、一匹の獣と化した主人公が凄惨な戦いの果てに全てを失い、慟哭するという哀愁に満ちた結末を迎えるのですが、漫画版の方は粗筋そのものは原点を忠実になぞりつつ独自のエピローグを用意しており、よりまとまりのある作品に昇華されております。
またヒラコー(平野耕太)作品同様、シリアスで殺伐とした展開の合間に差し挟まれるベッタベタかつコッテコテなギャグも良い清涼剤となっており、隠れた名作として力いっぱいおススメ!

旧マガジンZ版単行本は未完のまま終わっちゃってますが、徳間書店から全話完全収録の完全版文庫が全5巻で刊行されておりますので、興味のある方は一度手に取ってみてはいかがでしょうか?(別に徳間書店の手先じゃないですよ!)



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以上、『小ネタ』でございました。

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Posted by フォートレスWEBショップ  at 22:24 │Comments(0)タナ・セガール名作劇場

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